米作り農業の行方
夏場は農業者としてはいろいろな会合があります。行政からの聴き取りや、農協・農済の会議など、新型コロナが5類になってからは、会議・会合のあとに懇親会が復活して、議論は酒が入ると盛り上がります。
弊社が属するJAひすいは、来年3月1日に隣りのJAえちご上越との合併を控えており、例年以上に会合が多いようです。総代として、あるいは委員として、いくつかの会合に出ていますが、皆さんまだまだ余裕があるのか、喫緊の課題として農業者の高齢化と後継者不在を正面から議論していません。
米作り農業者の平均年齢は74歳、農業就業人口全体の平均年齢は67歳を超えています。どう考えてもあと数年以内に生産現場は人手不足で破綻します。地域営農が破綻するということになります。大規模農家・農業法人に農地を集約しても、地域全体をカバーできなければ、大規模農家も破綻します。
こんな簡単明瞭な大問題を棚上げして、目の前の些末な問題に終始するのは如何なものかと常日頃思っていますが、もはや地域全体を維持継続することを自分が生き残ることとイコールだと考える人たちがいなくなったのかなあとも感じます。
私は21年前に日本酒メーカーとして米作りを始めました。酒造りを続けていくためには、米を安定的に確保することが必要ですが、農業後継者がいない現実を見て自社栽培に取り組みました。いばらの道でしたが、根知谷で農家がやめていく田んぼを引き受けながら、自社栽培100%の酒造体制を造り上げました。
農業施設・機械を買いそろえ、社員を農業後継者として育成し、たった1枚の田んぼから100枚を超える17町歩の面積になるまで、粘り強く栽培技能を磨いて、新潟県内でも数少ない特等米生産農家となりました。しかし、地域を見回せば先輩農家は数少なくなって、後輩の農家も3人いるだけで自家消費農家です。
気付いた時には、時すでに遅し、では何ともやりきれません。ジタバタしてもできることを地道に諦めずに最善を尽くします。懇親会は皆さん元気よく呑んで語り合います。「まだ62歳か、若いなあ」と言われると、「そうですね、死ぬまで現役、行くとこまで行きましょう」と先輩農家の尻を叩いています。2023.08.09YW