根知谷の日々 -Blog-

2023年産の仕込みを終えて

 2024年2月16日(金)、今期最後の蒸し米を仕込んで甑(こしき)倒しを迎えました。あとはもろみの管理、上槽(搾り)、火入れ貯蔵の作業を3月末まで続けますが、早朝からの作業が無くなり、大きな節目を越えました。

 ボイラーから送られる蒸気の音、蒸し上がった米を冷まして仕込タンクへ送るエアシューターの音、阿吽の呼吸で小気味よく動き回るスタッフの足音、慣れてはいても緊張感に包まれた時間と空間から解放されました。

 記録的な猛暑に耐えて実った五百万石と越淡麗の米は、やや硬いのではないかと予想されました。しかし、仕込み始めてみると発酵の経過は我々の経験値の範囲内で順調に仕上がりました。今まで様々な気候パターンを経験してきましたが、2023年産は長期熟成に適性を持つ軽快なタイプです。

 普通の酒蔵なら、「やれやれこれでまた秋までお休みだね、さて営業だ、売りに行くぞ」となるんでしょうが、ドメーヌ・ワタナベは3月から2024年産米の栽培準備が始まります。実際は2023年12月までに2024年産米の種もみや資材の発注は完了し、営農計画はすでにスタートしています。 

 米作りは土地に関わる仕事ですから、人間の都合で増やしたり減らしたりすることができません。地域住民が助け合い協力し合って、集落ごとに田んぼを荒らすことなく守っています。これが米作り農業の根幹です。工業製品として製造数量を増減できる日本酒メーカーとは別世界です。

 農業モデルとしての日本酒メーカー、なかなかご理解頂けないのが現実ですが、いつか当たり前にドメーヌ・スタイルの日本酒が飲まれ、語られる時代を夢見て、コツコツと実績を積み上げて参ります。2023年産米を無事に仕込んでくれたスタッフに感謝しつつ、2024年産米の作付けに向かいます。2024.02.19YW