根知谷の日々 -Blog-

「法隆寺を支えた木」

 糸魚川の本町通りに昔「島道書店」がありました。糸魚川高校に通っていたころ、参考書を探しによく行きました。数学が苦手だったので、解けない問題が載っているものを見つけたときの気持ちは今でも忘れません。

 NHKブックス、西岡常一、小原二郎共著、昭和53年6月20日 第1刷発行、私の手元にあるのは第35刷、昭和59年7月1日発行のものです。この本を島道書店で買ったのはいつだったか、記憶は定かではありませんが、レジに持って行ったときに老眼鏡をかけた店主から「いい本を見つけたね」と声をかけられたのを鮮明に覚えています。

 大学で経済学を学び、東京で長銀系の金融商社に採用されて、本社管理部門から支店営業を経験した3年間は一生の宝物のような貴重な経験でした。縁あって帰郷し酒造業に従事することになり、昔からの職人の世界と醸造学部出の技術系キャリアに挟まれて、少々神経質になっていた時期です。

 専門教育を受けていなくても、本人の努力次第で互角に戦える。現場経験を重ね、実戦で鍛える。もちろん、理論的にも太刀打ちできるだけの基礎知識を身に着ける。この本との出会いが20代から30代にかけて圧倒的な仕事量で酒造技能を体得する契機となりました。2024.02.24YW