根知谷の日々 -Blog-

ヴィンテージ日本酒?

 酒造りの世界に入って36年が経ちましたが、日本酒を飲み続けてここ10年くらい感じるのは、若いお酒が増えたことです。昔あった「老ねた」お酒はいただけませんが、若いお酒も飲んでいて疲れます。搾りたての生酒はフレッシュ感を楽しむものですが、普通に売っているお酒も昔に比べて熟成感があまりなくて、ゆっくり時間をかけて飲むには滑らかさがもの足りません。

 フレッシュローテイションが徹底されて、品質管理は格段に進歩していますが、日本酒の製品設計そのものが新酒に重点を置いているようです。原酒の貯蔵においても、冷蔵や冷房で低温管理して熟成を抑制しますが、その実は品質の劣化を防ぐことが主たる目的です。

 清酒酵母の開発が進み、香り重視の酵母が選択されることが増えました。化学的に不安定なものは低温管理して化学変化を抑え込むのが常道です。商品にも「要冷蔵」と表示して冷蔵管理の徹底を強く要請しているものが多く見られます。

 熟成して完成度が上がる日本酒は、香りの高いお酒ではありません。味わいを重視した造りになっていますので、2年から3年熟成すると落ち着いた香味になり、舌ざわり・のど越しが滑らかになります。こうした熟成酒はなかなか店頭に並びません。「古酒」として少々流通している程度でしょうか。

 弊社のようなドメーヌ・スタイルの日本酒は、自社栽培ですので収穫年(ヴィンテージ)を表示します。古酒よりも正確に生まれた年を表示しますので、その年の米の出来まで知ることができます。比べて飲むのも面白いですが、3年くらい熟成したお酒の味わいを体験すると、日本酒の楽しみに一層の広がりが生まれます。是非お試しください。2023.02.13YW