根知谷の日々 -Blog-

皆造(かいぞう)を迎えて

 2024年3月14日(木)、2023年産米の酒造りで最後のもろみを搾り終えます。今日でもろみが無くなりますが、この日を「皆造」と言います。酒造りの節目としてはこれが最後です。実際はまだ火入れ作業が残っていますので、すべてが終わりではありませんが、現場の負担が一気に軽くなります。

 昔の杜氏・蔵人が住み込みで酒造りをしていた頃は、「入蔵(にゅうぞう)」、「洗い付け」、「もと立て」、「ボイラー祀り」、「新酒祀り」、「甑倒し(こしきたおし)」、そして「皆造」と、その都度ささやかな宴会をしておりました。

 4月5日頃には杜氏・蔵人が自宅に帰る「蔵開け」で、静まり返った製造場はちょっともの寂しい感じがしたものです。今でこそ通勤の常勤社員での酒造りが当たり前ですが、5か月間寝食を共にした仲間との別れは独特の感慨がありました。もう私ひとりの記憶ですが。

 弊社では平成13年の酒造りを最後に杜氏・蔵人制が無くなり、社員による製造体制に切り替わりました。最後までひとりで残ってくれた杜氏さんは65歳で引退となりましたが、毎年皆造を迎えると昔の杜氏さん蔵人さんたちとの生活を思い出します。

 まだ米作りを始めていなかった頃なので、4月はぽっかり心に穴が開いたような感じになっていましたが、今はもう苗作りの資材が運び込まれて、2024年産米の作付け準備が始まっています。日に日に春らしくなってきて、気持ちはもう田んぼに向かっています。2024.03.14YW